平泉に関連する短歌、俳句の英語訳 1 松尾芭蕉編
平泉のガイドをすると、平泉に関連して読まれた和歌や俳句の句碑に出会います。特に、毛越寺、中尊寺、特に中尊寺には句碑や作者に関連する銅像など多くなっているので、外国人のお客様に「これは何だ?どういう意味?」と質問されることが結構あります。そういう場合の訳をご紹介したいと思います。
まず、平泉と言えば一番有名なのが、松尾芭蕉が「奥の細道」に掲載した、
「夏草や 兵どもが 夢のあと」
でしょう。実は、この英語の句碑が毛越寺にあります。英訳は岩手の偉人、「武士道」の新渡戸稲造です。訳は以下の通りです。
The summer grass, 'Tis all that's left, Of ancient warriors' dream.
英語が句に刻まれているので、毛越寺のガイドの際には、これを見ればいいのでやりやすいと思います。あと、日本文化研究・翻訳者のドナルド・キーンさんもこの句を訳しています。
The Summer grasses, Of brave soldier's dreams, The aftermath.
…という訳だそうです。新渡戸博士の方の句には、古い英語が使われていて、'Tis はit is の古いタイプの短縮形、とのことです。
あと、平泉に関する芭蕉の句で有名なものがもう1つあります。
「五月雨の 降り残してや 光堂」
この光堂とは、金色堂のことです。「五月雨は長く降り続いて全ての物を腐らせてしまうが、この光堂には遠慮して降らなかったのだろうか」という意味で、金色堂が昔の姿を保っていることを示しています。
やはり、中尊寺にも芭蕉の銅像と句碑が、金色堂から旧覆堂(鎌倉幕府が建てたもの。現在の覆堂はコンクリート製)に続く道の途中にあります。こちらには、簡単な英語の解説はありますが、俳句の訳は書いてないかもしれません。
Eary summer rains, Fall not here, Temple of light.
上記が翻訳になります。こちらは誰の訳か不明です。もしかすると、平泉町の観光協会が発行したパンフレットなどに、掲載されていたものかもしれません。ガイドで作成したガイドテキストがあるのですが、それには、このように書かれていました。ご主人が平泉町出身で、町内に長く住んでいるイギリス人の方がいるのですが、その方の訳かもしれないです。
他の句もそうですが、俳句の訳だけだと何のことかわからないかもしれないので、背景や意味などのわかりやすい説明を付け加えることも、必要になってくると思います。
ちなみに、芭蕉の「奥の細道」は、”Narrow Road to the Deep North" という英訳になります。最後の分部をdeep north ではなく、interiorと訳している人もいるようです。
中尊寺には、芭蕉の他に西行の短歌、宮沢賢治の詩、あと弁慶の墓のところに、弁慶に関する俳句が書かれた句碑があります。西行以外は、こちらから案内しない限り、あまり質問されることはないと思いますが、それでも時々、自分の方から句碑を見つけてきて、「これはどういう意味か?」と尋ねる方もいます。一度、宮沢賢治の詩の碑文について聞かれて、答えに詰まったことがあるので、もし中尊寺を案内したいという方がいれば、覚えて置いた方がいいと思います。また後程英訳2で、意味などについては紹介したいと思います。
お寺などで何か質問されてわからなかった場合、どうしたらいいでしょうか?自分で勝手に答えを作らず、売店やお寺のスタッフに聞くことです。大体どんな質問にも答えてくれます。また、どうしてもスタッフが見つからなかった場合には、「これは私の想像ですが…」とか「多分、こういうことだと思います。」に該当する英語をつけて(例:I suppose it is..., This is my opinion but I think...とか)、自分の想像や意見であることをはっきり示して、答えた方がいいようです。