私の通訳ガイド試験合格体験記
今日Facebookのある翻訳者・通訳者グループの中で、ガイド試験に関する質問がありました。コメント欄に書くととても長くなりそうだったので、ブログに自分の体験を書くことにしました。
私はガイドの資格は、岩手県の地域限定通訳案内士と、全国の通訳案内士の資格を持っています。岩手県の方は、2006年に受験して、一発合格できました(登録は2007年度)。しかし、全国の方は、取得までに4年もかかってしまいました。当時子供向け英語教室の講師を週5日でやっていたので、そのためもありますが、試験を甘くみていたせいもあると思います。
こんなに時間がかかってしまったのは、邦文試験がそろわなかったことが主な原因です。英語については、英検1級を持っていたので、一次試験は免除でした。
1年目は、歴史を落としてしまいました。実は歴史は学生の頃得意科目の1つで、それで、「勉強しなくても大丈夫」と思い込み、苦手意識のあった地理と一般常識のみ勉強していました。すると、予想に反して手ごわい問題が多く(高校生だった頃からウン十年たっていたので、忘れていたことも多かったと思います(^^;))、こともあろうに歴史が不合格になってしまったのでした。
翌年は反省を生かして、歴史は美術史、宗教史(特に仏教の変遷について。有名な寺院の構造、寺院にある彫刻などの美術工芸品も含める)、日本にゆかりの外国人、外国と日本との関係、明治以降の通商条約改正、などについて特に重点的に勉強しました。大学入試用の分野別問題集(写真も多く入ってるもの)で勉強しました。これらは、実際にガイドをする際にも、とても重要な項目です。1次試験の時から、よく勉強しておいた方がいいと思います。2年目は、努力の甲斐あって、歴史が合格し、邦文は3つそろいました。
しかし、2年目、こともあろうに英語の面接で落ちてしまったのです。これも、甘くみていたところがあったのだと思いますが、面接の時に途中まではいい調子で進んでいたのですが、「東京で日本庭園を見たいのですが、どこかお勧めはありますか?」と面接官の外国人に訪ねられました。すると、いつもぱっと出るはずの項目なのに、名前が出てきませんでした。「えーっと、あれだよ。あれ。何ででてこないのー!」と言った調子で言葉が出なくなり、苦し紛れに「寺に行けば何かあると思います。」と答えてしまいました。その後は調子がくるって総崩れ、と言った感じで、なんと部屋を出た直後に、「新宿御苑だった…」と思い出しました。これが、例えば学校に通って勉強した人なら、「東京よりも、東京からちょっと離れたところに、日本三大庭園の1つ、水戸の偕楽園がありますよ。そちらの方がお勧めです。」などと答えられたかもしれません。でも、そんな機転など利かず、とにかくしどろもどろになっただけでした。
3年目は、苦手の地理を落としました。これはやっぱり、という感じでした。写真で出てきた観光地の名前が、まったくどこなのか分かりませんでした。この反省から、地理は、翌年、世界遺産、国立公園、国定公園についてかなり詳細に勉強しました(やっぱり、直前2か月くらいになってしまいましたが…)。世界遺産の廉価なDVDを購入して、パソコンで見るようにしました。そして4年目で、また全部そろって2次試験に進むことができました。
実は、英語の2次試験については、ちょっと悩みがありました。「ハロー通訳アカデミー」の300選とか、トラッド・ジャパンの江口さんが書いた日本事情などを暗記しようと試みたのですが、どうしても最初の3分の1で止まってしまい、最後まで行けなかったのです。ここまでしか行けないのはまずい、まだ文化とかいろいろな項目が残ってるし、どうしよう?と思って考えたのが、日本語の項目のキーワードと、それに対応する英語を抜き出して、その項目の重要単語を覚えることでした。これなら、ざっと全体を見て覚えることができます。
例えばこんな感じです。
項目 | キーワード | item | Key word |
日本列島 | 3000km 4つの大きな島、6千の小島 モンタナ州と同じくらい 南北に3000km | Japaese archepelago | 4large islands, 6000 smaller islands, as big as Montana, streching 3000km from norh to south |
気候 | 積雪量・降水量 活火山 日本海側雪多い 地震 火山世界の10% 四季の変化はっきり 自然との調和 | climate | precipitation, active volcano, lots of snow in Sea of Japan side 10% of worlds' volcano distinctive four seasons, harmony with nature |
梅雨 | 雨季 降雨前線 6月中旬から7月下旬 停滞 | Rainy season | rainy season, rain front, mid-June to mid-July, settle over |
台風 | 太平洋上 暴風雨 来襲 9月から10月 | Typhoon | in the Pacific Ocean, violent tropical storm, hit, during the September through November. |
桜前線 | 九州から北上 移動 花見 | the Chery blossom front | first bloom in Kyushu and spared north, movement, cherry blossom vewing party |
花粉症 | スギ花粉 アレルギー性 木材の供給 杉 花粉 | Hay fever | cedar pollen, alargic, the supply of timber, pollen, |
北方領土 | 北海道東沖の4島 旧ソビエト 1945年に占領 返還 拒否 | Northern Territories | four islands northeast of Hokkaido, now defunct Soviet Union, occupied in 1994, return, refuse |
このような表を、「日本事情」に掲載されていた項目全部について作って、偏りがないよう、最初から最後までざっと眺めることを繰り返すようにしました。なるべく、日本語の項目と英語の項目を声にだして読んで、おぼえるようにしました。
その時の2次試験は、とてもうまくいきました。多分、この4年の間に、岩手県内のガイド、特に平泉はかなりガイドをやっていた、ということもあると思います。質問に関する答えを、全部東北に関連付けて答える作戦をとりましたが、結構うまくいきました。たとえば桜の名所なら、東京の有名どころではなく、角館を紹介する、という具合です。
今、2次試験の形式は変わってしまいましたが、やるべきことは基本的にあまり変わらないと思います。通訳があるので要注意ですが、それも基本的には同じような勉強でなんとかなるのではないか?と思います。ただ、特に通訳については、練習をしておいた方がいいと思います。
このように、私もガイド試験については、結構苦労しました。でも、おかげで、ここ数年増加傾向にある、ガイドの仕事をすることができています。日本は他国に比べると安全で、人も親切、街も綺麗、食べ物も豊富でおいしい、ということを外国人の方々は言って下さることが多いです。特に、安全性というところで、最近テロなどが頻発する欧米に対して、日本はアドバンテージがあると思うので、今後もしばらく増加傾向は続くのではないかと思います。
また、今年から試験がかなり変わり、もう一科目勉強する項目が増えたので、それはおさえて置いた方がいいと思います。私もブログの中で書いているし、そちらの方やJNTOのウェブサイトなどを参考にしてください。
ガイドの資格を取らないという選択肢もありますが、大手の旅行会社が募集するツアーなどについては、有資格のガイドがいるかどうかを旅行者に知らせる必要がある(?不確かですみません。JNTOのサイトをご覧ください)、というようなきまりがあったと思います。やはり、長期間お客様と一緒にいたり、スポットでないガイドの仕事は、きちんとした資格のある人にまかせたい、ということのようです。
今年受験予定のみなさん、頑張ってください。